シノビオリンを知る
大いなる可能性を秘めた シノビオリン研究
シノビオリンは細胞一つ一つの中に存在し、ある特定のタンパク質を壊すための目印をつける働きをしています。
目印がつけられたタンパク質は、バラバラに分解され、そのタンパク質が本来持つ働きを発揮することができなくなってしまいます。
さらに、中島利博博士(医学)は研究を進める中で、シノビオリンがミトコンドリアの生成に一役買っているタンパク質 PGC-1β(ピージーシーワンベータ)にも目印をつけていることを発見しました。目印がついたPGC-1βは壊されてミトコンドリアを作り出すことはできなくなってしまいます。
このようにシノビオリンが、PBC-1βだけでなく、幅広い疾患に関係しているのは、この「壊す目印をつける」という働きによるものです。今後の研究により、シノビオリンが目印をつける新しい相手が見つかれば、その疾患の新しい治療法が解明されるかもしれません。
リウマチの原因をつきとめた先にあった シノビオリンの発見
かつては不治の病とされたリウマチ。今日では研究が進み、免疫反応を標的とした薬の登場で、治療法はめざましく進歩しました。しかし、リウマチ特有の症状である関節の腫れと痛みを引き起こす「滑膜細胞の異常増殖」の原因は、多くの研究が進む中でも解明されないままでした。滑膜細胞とは、関節の中を内貼りしている細胞で、関節の潤滑油となる物質を作り出しています。リウマチでは、この滑膜細胞が突如増殖を始め、ついには骨や軟骨にまで侵略し、関節の機能を破壊させてしまいます。この滑膜細胞の異常増殖の原因は、謎として残されたままでした。中島利博博士(医学)は、滑膜細胞の異常増殖に着目し、日夜研究を重ね、ついに滑膜細胞の異常増殖を引き起こす新しいタンパク質「シノビオリン」注1※を見出しました。中島利博博士(医学)のシノビオリンの発見は、医学界に大きな反響を呼びました。
注1※
滑膜細胞の英語"Synoviocyte シノビオサイト"にちなみ、この新しいタンパク質とその設計図である遺伝子を「Synoviolin シノビオリン」と命名しました。シノビオリンという名前は、ヒト遺伝子の名前を 認可する国際的な機関であるHGNC (HUGO Gene Nomenclature Committee) によって承認されています。
リウマチから肥満まで、多くの疾患に関与
中島利博博士(医学)が、シノビオリンの働きについてさらに研究を進めていくと、驚いたことにシノビオリンは、リウマチだけではなく私たちの体を構成する細胞一つ一つに関係していて、私たちの健康維持に深く根ざしていることがわかりました。シノビオリンの働きが何かのきっかけによって制御不能になると、リウマチやリウマチのように細胞の炎症がもととなって起こる疾患、さらには肥満や加齢にともなう様々なトラブルなどが引き起こされてしまうのです。現在、中島利博博士(医学)をはじめ、国内外の研究者がシノビオリンの研究に取り組み、様々な疾患への関与を一つ一つ明らかにしつつあります。