肝硬変とシノビオリン
リウマチと肝硬変の共通点『線維化』に注目
肝硬変は、肝臓の中で炎症が繰り返し起こることにより、肝臓が硬く小さくなる線維化と呼ばれる変化を起こし肝機能が低下する病気です。
実はリウマチも肝硬変と同じように関節の中で炎症を繰り返し線維化を起こします。
中島利博博士(医学)は、このリウマチと肝硬変の共通点にいち早く気づき、肝硬変もリウマチと同じようにシノビオリンが関わっているのではないかと考えました。
そこで米国のグループと共同して研究を開始し、肝硬変の患者さんの肝臓を詳しく調べてみると、健康な人に比べてシノビオリンが多く存在し、働きが活発になっていることが明らかとなりました。
また、アルコールや肝炎ウイルスなどの肝細胞にかかるストレスがシノビオリンの働きを活発にし、その結果肝硬変に移行するという仕組みを発見しました。
さらに、肝硬変になるマウスにシノビオリンの働きを抑える薬を注射すると、肝硬変の発症を抑えることができました。これらの成果により創薬に弾みがつくとともに、今後も研究に力が注がれていくことでしょう。
癌抑制物質 p53とシノビオリン
シノビオリン抑制はガン抑制物質 p53を活性化
通常、健康な人間にはp53遺伝子が一対あります。ところが、がん患者の過半数にこの遺伝子に変異や欠損のあることがわかりました。
とくに、p53遺伝子が機能を失うと、がん化する頻度が著しく上がるとされています。このp53遺伝子にも、シノビオリンが関係していることが判明しました。
シノビオリンを抑制すると、 p53遺伝子が活性化することが明らかになったのです。
筋ジストロフィーとシノビオリン
病の子供たちを救うために共同研究
筋肉が破壊と再生を繰り返しながら次第に萎縮し、筋力が低下していく難病、筋ジストロフィー。
この筋ジストロフィーは、子どもたちに多い疾患です。「未来ある子どもたちを何とかして救いたい」という思いから、中島利博博士(医学)は、筋ジストロフィーでもシノビオリンの働きを抑えれば筋肉の萎縮を遅らせることができるのではないかと、現在、イタリア・英国の研究チームと共同体制を組んで研究を進めています。
これまで様々な疾患に対して効果を示してきた「シノビオリンの働きを抑える薬」は海を渡り、現在ではイタリアで効果が検証されています。まだまだ実験段階ですが、シノビオリンの働きを抑える薬は、筋ジストロフィーという難病に対しても一筋の光になると注目されています。